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あとがきのようなもの

 すっかりご無沙汰してしまった。お話が一段落してから半年、昼寝をしたり豪雪の新潟に居座ったり、Spotifyのヘビーユーザーになったりしている。あとがきのようなものを書く書く詐欺をしてしまっているのが気がかりだったので、冬眠していたい身体を表参道まで引きずり出してきたところだ。実際頭が眠っていたのは夏から秋にかけてだけで、ものを書く元気もいい加減取り戻している。今日も軽快にチャリンコを漕いできた(表参道ヒルズは駐輪場が無料なのだ)。

 いまだに続いている毎日の手前に線を引いて概括するのは、やめておく。その代わりに、今回は、長い時間をかけて考えたことを、ものすごく端折って言いたい。あなたに。

 誰かといるのは、嬉しいけれど、生に近すぎると思う。

 何年間も、心が止まっている自覚があった。一方で、スポーツカーみたいにエンジンを蒸しながら突っ走っている時代もあった。両方知って残ったのは、何も感じないのもけっこう楽なものだし、別に構わない、という気持ちだった。

 だから、好き放題やって満足したら、ぽっくり逝けちゃうくらいの責任のなさ。そういうのがいい。これは頭で思っていたこと。ただ、陽向さんが美沙さんに思ったように、「私はあなたも来る世界を選んで生まれてきたのだ」。

 これはまえがきに書いた初恋の延長の話の続きのつもりでもあるし、みんなに向かって言っていることでもあるのだけれど、あなたが笑っていればいいなんて純粋な時代は終わってしまった。今の私には、すべてを投げ出してでも成したいものだけがあるのだ。そして、こうやって信念をつらぬくことは、私にはとても幸せなことだけれど、喜びに足がもつれる感覚を、いつだって忘れることができない。私たちはそのうち弾ける。水面の泡を追いかけていた視線がいずれ彷徨うしかなくなるように、神様さえ気づかないうちに終わる。

 でも、私のなかで確固たるものになった1つだけがあって、それは純さんたちの世界では、いつでも晴れているということだ。梅雨でも台風でも、私たちの晴れはここにある。どれだけ退屈な日でも、世界中のすべてに対して、見守るような気持ちが湧いてくる。

 だから、もう少しこの場所にいるのも、悪くないだろうな、と思っている。2022年の最初の冬が終わった今、純さんは東京をほっつき歩いているらしい。私はそれを追いかけている。ひととおりやり尽くしたら、続きがはじまるんだと思う。成さなければならないことは、何をしても成さなければならない。何をしなくても、あなたに会わなくても。それでも、ここでは息継ぎをしていこう。

 これからもしばらく、鮮烈な日常が淡々と続く。それがまたきっとここに現れるから、待ち合わせをすっぽかされた日や、机に向かっているのが嫌になった日や、何もしない宙ぶらりんな自分に苛立った日に、覗き見て、思ってくれたらいい、と思う。

2022年3月 大竹菜々子

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